Thursday, November 15, 2007

松井孝典 / 南伸坊 『「科学的」って何だ!』

 愉快痛快であるが、同時に、夢のない大人と映ってしまう。

Amazon.co.jp: 「科学的」って何だ! (ちくまプリマー新書 66)

 「ちくまプリマー」なので、中高生向けの書籍である。中高生向けの書籍は、ざっくりと概要を掴むのに最適である。なので、岩波ジュニア新書、ちくまプリマー新書は注視している。大人でも躊躇することなく手に取れと、自分に言い聞かせている。

 さて、本書は『「科学的」って何だ!』というタイトルと、松井孝典氏ということを考慮すれば、「宇宙に関することかしら?」と思うのが自然だ。しかし、内容は「メディア・リテラシー」と「情報リテラシー」である。Amazonのレビューを見ていると、ここら辺の食い違いが低評価のひとつと考えられる。実際、私もがっかりした。

 気をとり直して読んでみる。基本、愉快痛快である。しかし、読者ターゲットである中高生にはどうだろうか?と思うふしがある。自分の経験のみを頼りにした推測である。

 私が小中学生のころ、テレビではオカルトやら心霊現象やら超能力やら宇宙人やら無法地帯であった。毎週のように、これらのどれかが特番で放送されていたように思う。そのような番組では、たいてい、科学者と称する人が何人かゲストでいる。反論者として、もしくは、科学敗北のピエロとして。

 私はここで、まんまとテレビの術中に陥る。科学者はなんて夢のない連中なのだ。これらの現象がそう簡単に科学で理解できるのか。いや、できないんじゃないの。じゃぁ、不思議な方を信じちゃうよ。ほとんど生理的な反感・嫌悪である。理論もクソもあったものではない。

 本書には「科学者はなんて夢のない連中なのだ」と思わせる部分が多いと、私は感じる。そこに、もうひとりの著者、南伸坊氏はつっこみを入れるのであるが、突き放されてしまう。ディスコミュニケーションである。私が小中学生のころ、テレビを見ながら感じていたのと同じ感覚が本書に残っている。

 さてさて、残念がっていても仕方がない。本書では教育、特に科学教育に問題提起をしている。それが本書のコアである。

 日本に科学者という肩書きを持った人がどれほどいるか知らない。リタイアした科学者は義務教育課程へ天下りしてくれないだろうかと思う。子どもたちばかりへの影響ではなく、先生への影響も大きいはずである。そして、科学の授業で「読書会」も考えられてよいはずである。実験も確かに面白い。米村でんじろう氏などは、科学への門を開くのが役割だと考えていると、私は思う。その門をくぐった人への手助けとして「読書会」ほど必要不可欠なことはないと、ふと、考えた。

 古典物理は、子ども時代の「遊び」や生活そのものが読書会の役割をしている。しかし、高校でやる磁気学はチト日常から遠く、「遊び」や生活からイメージするのが難しい。物理を綴る数学に至っては、中学から抽象的な概念が入ってくる。幾何は大切な分野であるが、これも、微分・積分ほど直感的ではないというのが、私の経験である。

 サイエンス・カフェは学者間のブレインストーミングという性質が強いように、私には感じる。しかし、本来は学者と一般人のコミュニケーションの場である。それを教育現場へ持ち込んでもよいのではないか。私はこれを、リタイアした科学者がタクトを振るう「読書会」とした。如何なもんか?

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