Wednesday, May 30, 2007

『ネイチャー』を英語で読みこなす

 本書が、地元の国立大学でシラバス図書に指定されていたのか分かった。

Amazon.co.jp: 「ネイチャー」を英語で読みこなす

 本書は英語の指南書やハウツウ本ではない。本書の半分は、『ネイチャー』とはどのような雑誌なのか、という説明に費やされている。この説明のためだけに、(おおよそ)100ページも費やすほどの雑誌なのかというとそうではない。

 著者の竹内薫氏は、長年『ネイチャー』の翻訳作業を行っていた、内情を知る人物である。英語のオリジナル版と訳版が微妙に異なるわけとか、どのような論文が採用されるのか、大学入試に出題される、などを前半部で述べている。これは読む価値がある。イイことがありそうな気もする。特に高校生くらいにはよい影響を与えるのではないだろうか。

 後半は、『ネイチャー』に記載された論文から竹内氏がピックアップした20選に、内容解説と英語解説がつけられている。私は『ネイチャー』を購読していないので読むことはあまりないのだが、読んだことのある記事が2つ選ばれていた。ちょっと、うれしくなった。

 前半部分は誰かに指摘されずとも知ることができる。研究に携わるようになれば、情報収集のため「読む」という行為が義務になる。論文を提出する仕組みも生活に関わってくる。しかし、早いうちに知っておくと有益な情報だ。『ネイチャー』に限らず、学術誌を読みはじめるきっかけとなるだろう。そういった意味で大学のシラバス図書に指定されているのだと腑に落ちた。

外国語としての日本語

 国語教育と日本語教育の差を見てみると、ネイティブだけではダメという理由がよくわかる。

Amazon.co.jp: 外国語としての日本語―その教え方・学び方

 まず、本書はエッセイ的なおもしろさがある。「外国人のニホン語、言いまつがい」集という側面もあるので「ある、ある」などと笑える。まぁ、私のわらいのツボなのだろう。

 さてさて、本書の核は、「私たちが自然と体得した日本語ルールを、体系化するとどのようなものになるのか」というものだ。自分が、体系的に日本語のルールを教えることができるかどうか、ということを考えると、そうとうの訓練を受けていないと無理だとわかるだろう。

 無味乾燥な文法の持つ力を実感できる本だ。

Saturday, May 26, 2007

理科系の英語

 先日の池谷氏の本から
―日本人の著書の方へ―
英語のネイティブな方に文章をチェックしてもらってから
論文を投稿してください。
(『魔法の発音 カタカナ英語』 pp.12)

 うん。そうなのだ、そうなのだ。でも、英語のネイティブというだけではダメなのだ。だから、非常に手間がかかるのだ。

Amazon.co.jp: 理科系の英語

 論文のチェックに英語のネイティブという条件だけではダメというのは本書に書かれているので一読あれ。ちょっとした笑い話です。

 さて、本書は木下是雄著の『理科系の作文技術』(中公新書)の英語版というスタンスだ。中公新書からは『理科系のための英文作法』というモノも出版されているのだが、こちらは未読。

 書くさいの心構えは、構成は▼型で、1文は短く、一義的に意味がとれる文章を心がける、などは『理科系の作文技術』と同じだ。英語に特化した指摘としては、冠詞と名詞の単数・複数、前置詞の使い方、類語、分詞構文があげられている。

 よく問題となる冠詞についてだが、著者の以下の指摘は腑に落ちる。
冠詞は限定詞であるということに強い意識を持つべきである。つまり、冠詞は、自分の考え、事実関係などを明確に示すための極めて重要な道具である。従って、「冠詞が名詞につく」というより、むしろ「名詞が冠詞につく」と考える方が妥当と思える。[pp.73]

 冠詞をこのように考えると間違える頻度は減ると思う。私も基本、このように考えている。これは話すときにも有効だと思っている。

 そして、理科系だけの問題ではないと思うが略語についてもふれられている。本書が示すように技術用語の略語は多い。しかし、あまり下品に略語を公にしないように釘を刺している。理由は、略語ばかりになり、一体なにを指しているのか不明瞭になること、もうひとつは、英語に不慣れなために下品なスラングと同じスペルになってしまうことが示されている。論文ばかりでなく、プログラムを書く際のクラス名やモージュール名なども同じような失態につながりかねないので、ここらへんはかなりシビアだ。

 その他、勉強法として、書く力をつけるために筆写を勧めたり、リスニング力の重要性を説いたりと目新しいことがないのが英語の修得に王道なしといったことをさらに強くする。

Friday, May 25, 2007

魔法の発音 カタカナ英語

 脳科学者の池谷裕二氏による、英語発音本。ネタとしては古典。

Amazon.co.jp: 魔法の発音 カタカナ英語

 ネタとしては古典なのだが、「PART1 意識改革編」にかかれていることは有用だ。
本や文字は本当にそこにあるのでしょうか。[p.21]

という、脳科学の導入部分を引き合いにし、認知と英語の問題を理解させようとしている。そして、P.24にある「英語の上達はあきらめよう!?」で核心にふれている。
「La」という空気の振動が耳に届いて鼓膜を性格に振るわせたとしても、残念ながら私の脳には「La」に反応する脳回路はありません。しかたなく脳は「ラ」の神経を反応させます。となれば、私にとってその音は「ラ」以外の何物でのないのです。なぜならば、音は脳の外側にあるのではなく脳の内側で作られるのですから。[p.25]

 絶望的なことが書かれているが、もっと絶望的なことがその下にある。
聞き分けるのは無理でも、発声の能力ならばうまく身につけられる可能性があるのです。……私はBとVをうまく発音できているのかもしれません。にもかかわらず、私が発したBとVの音が、悲しいかな、自分にはまったく同じに聞こえるのです。[p.26]

 心当たりがある人は多いと思う。

 本書で言いたいことは、――日本語話者が「La」と「Ra」を「ラ」と認識してしまうように、英語話者も舌を口の中のどこにも触れず「ラ」と発した音を「Ra」と認識してしまう。ならば、カタカナを利用して、英語話者に英語の音として拾ってもらえるような発音を模索しましょう―― ということだ。

 カタカナ発音に関してはすでに多くの書物もあるので、本書にこだわる必要はないと思う。本書ではwomanをウウォムンとしているが、他の本でウオマンと示しているのを見たことがある。日本語話者としてはまったく違う音であるが、英語話者にはどちらもwomanと聞こえるらしいので……。しかし、意識改革だけは本書でなければ読めない。

Monday, May 21, 2007

ガンダムで英語を身につける本

 おもしろそうだったので立ち読み。ある有名なシャアの台詞がこう英訳されていた。
Because
He was a spoiled brat.


Amazon.co.jp: ガンダムで英語を身につける本―あの名セリフは英語だとこうなる!

 初代ガンダム好きにはたまらない内容です。立ち読みなので、詳しく読むことができていないのですが、「3. キャラクター別の感情表現」は、おそらくニヤニヤしながら見ていたことでしょう。が、正直なところ、ガンダムの内容に注意が向いてしまい、英語そのものは、まったく覚えていない……。本末転倒になりかねない。

 この本のように、日本語で親しまれているモノを英語にして教材にしましょうというモノは多い。しかし、英語が身につくかどうかというと???だ。

 まずは英語そのものを自分のなかに蓄えなければいけない。たとえ意味がわからずとも、自分の中に英語を蓄えることが必要だ。この類の本だとそれが望めない。どうしても日本語が勝ってしまうからだ。これは仕方ないことだ。教材選びはむずかしい。個人的にはネタ本。

 さて、先の英訳だが、これは「坊やだからさ」というシャアの台詞だ。

Saturday, May 19, 2007

考えることの科学

 タイトルが漠然としていて何の本だか分かりにくいが、推論を認知心理学の側からのぞいたものだ。

Amazon.co.jp: 考えることの科学―推論の認知心理学への招待

 よくよく著者を見てみると市川伸一氏ではないか。市川氏というと、私には『英語を子どもに教えるな』などの英語教育に関する著書が真っ先に思い浮かぶが、本職の認知心理学の本は読んだことがない。

 4枚カード問題や三囚人問題が載っていたので手にした。論理の本かと思っていたら、なにやら方向性が違う。心理学的なアプローチで話が進むので面白い。メインは確率・統計の世界に関する推論に関するもので、直感と確率・統計論による乖離を認知心理学で説明している。

Thursday, May 17, 2007

カミナリオチタ

 徘徊していて見つけた映像。あまりに衝撃的だったのでピックアップした。



 目前の木にカミナリが落ちた瞬間をとらえたものなのだが、この手の映像は大抵人工的に作り出したカミナリを基に再現VTRなどを作っているので、その類の映像は今までに見た記憶はある。しかし、それとはあまりにも様子が違うので(おそらく)ホンモノはやっぱ違うなぁと、少し怖くなった。

 このような自然現象の映像は教材にいいのではないかと、密かに思っている。

Wednesday, May 16, 2007

二重塾

 まったく意味がわからない。

中学受験、広がる二重塾 : 京都新聞電子版

 記事によると、「中学受験をするために進学塾に通う。しかし、進学塾の講義についていけない。それをカバーするべく塾に通う。」ということらしい。

 中学受験ってこんなに金になるんですか?

英語の歴史

 英語史を勉強している時に読みたいなぁと思っていたのだが、なかなか手に入らずに読めなかった。先日、ブックオフで売られていたので手にした。

Amazon.co.jp: 英語の歴史

 テキストのごとく、音声、語彙などの項目で話が進められるので英語史のイベントの概要を掴むのによい。通教のレポートやカモシュウにも使えるような内容であるので読んで損はない。

 時系列で見たい場合には少々厳しいものがあるが、それは巻末の年表で補っているのだろう。トリビア的な書き方になっているのが新書らしいが英語史の副読本としてよいのではないだろうか。

 新書で英語史というと渡部昇一氏の『講談・英語の歴史』がある。こちらは読んでいないのだが、Amazonのレビューを読むと、こちらのほうがアカデミックな内容のようだ。

英文法ゲーム104―たった104題が、あなたを英語のできる人に変身させる!

 直訳を推進するやり方だったので手に取った。文法説明の流れも独特だったので参考になると直感したのだが、教える側はとても参考になる。初学者の文法書として最適だと思う。

Amazon.co.jp: 英文法ゲーム104―たった104題が、あなたを英語のできる人に変身させる!

 初学者に英語を教える際に一番困ることは、文型以前に句や節だと思っている。句や節は主部、目的語、補語、副詞機能とありとあらゆるパーツ(句や節)になり、かつ、不定詞、分詞など英語らしさを多分に含むもっとも厄介なものである。この本のよいところというか感心したことは、まず、パーツ説明をしてから建設的に文の理解に導いていることだ。これならば、述部動詞を見つけるよい訓練になると感心した。

 そして、直訳にこだわっていることがなんとも憎らしい。今、直訳は悪しきものとして敬遠されているが、1語たりとも見落とさぬという姿勢は文法理解に貢献する。訳しかたは漢文型で、学校文法のそれとなんら違いはない。助動詞を述部動詞とみなす、その大胆さは驚いたが、学校文法のそれと大きな違いはない。

 学校で教える際にもっともスタンダードな教え方としては、まず、5文型を先に教えてから、細かなパーツという流れだと思うが、これが述部動詞の発見を困難にしているのではと思っている。この本の最大のメリットは学びの順番に優れているということだ。

 しかし、一番驚いたことは、上大岡トメが理科大出身だということだ。ほぅ、へぇ……

Tuesday, May 01, 2007

これが正しい!英語学習法

 斎藤兆史氏の本はいつも私をへこませるが、これはそうではなかった。

Amazon.co.jp: これが正しい!英語学習法

 斎藤氏は「英語学習の王道は英語の賢人にそれに学ぶべきだ」という。本書はそれを行うための手引書である。ちくまプリマー新書なので、対象者は大人ではなく、中高生くらいだ。それに合わせて、斎藤氏としてはやさしいことばで書かれている印象を受けた。

 本書にはところどころ英語力をチェックする設問があるので、読むのには時間がかかろう。しかし、それをすっとばし読んではいけない。とりあえず、通読して、精読することをお薦めする。そして、これに物足りなさを感じたら中公新書の『英語達人塾 極めるための独習法指南』を読むのがいいと思う。