Monday, February 18, 2008

橋本治 『ハシモト式古典入門―これで古典がよくわかる』

 目からウロコが落ちる1冊だ。文庫版がちくま文庫から出版されているようだが、私が読んだのはごま書房の単行本版である。

Amazon.co.jp: ハシモト式古典入門―これで古典がよくわかる (ゴマブックス)

 なぜ古典を勉強するのか?学生時代の最大のなぞであった。なぞであったのだが、真剣に考えたことはない。当然、勉強もしない。全くしない。人生で、古典に触れた時間は学校の授業のみである。勉強していないので、参考書を読んだこともない。はじめての古典に関する本である。

 なぜ本書を手にしたのか?それは、ことばについて書かれていたからだ。日本語の歴史が本書の半分を占めている。これは本書にもきちんと書かれている。

実は私は、この本で「受験生用のわかりやすい文学史」を書きたかったんです。(pp.222)

 私は日本語の歴史に興味がある。なぜ興味があるのかは、私の経験による。

 上に述べたように、私は古典の勉強を華麗にスルーしてきた。そんな私に大学時代の友人が言った。「漢文って、中国語だろう」と。血の気が引いたのを覚えている。古典を軽視してきたことを悔やむと同時に、強い満足感があった。「あぁ、そうだったのか……」と。のちに、中国人の同僚と話をしたときも同じような満足感があった。彼は高校のときに日本へ来た。公立校で学んでいたという。その彼がいう。「日本語は簡単。国語は漢字を追っていれば意味はわかる。漢文は中国語でしょう。ひらがなはすごい。数学はまた別の言語だし、問題は漢字を見れば理解できる。英語は日本人と変わらないね」と。思い出しながら書いているが、「ひらがなはすごい」のところに無意識がひっかかっていたのだろう。後日、『その時、歴史は動いた』の「ひらがな改革」の回を楽しみながら見ていた。

 いちおう、古典に関する「ひっかかり」は持っていた。そんな私が偶然、本書を手にした。「橋本治」という名前はもちろん知っていた。しかし、認知したのはごく最近である。それまでの間、『こち亀』の作者だと思っていた愚か者である。パラパラめくってみるとこんな目次が並んでいる。

  • 外国語で日本語をやるしかなかった奈良時代
  • 「ひらがな」と「カタカナ」
  • 「ひらがな」の持つ意味
  • 「漢字+カタカナ」の書き下し文は、現代日本語のルーツである

「うわ、すごい本みつけた」と思ったのと同時に、「なんで今更……orz」という思いもあった。複雑だったが、好奇心が勝った。読んでよかった。

 古典とは全く関係ないが、本書を読み感じたことのひとつに「古典が出来た人は、外国語もできるようになるのではないか?」がある。なぜか?現在では使われていない文法ルールがある。その理解は外国語に通ずると思う。それに、単語が分かればある程度は文を理解できたり、読めるんだけれども意味が分からないなどの共通点もある。残念なことに学校教育では、みごとに国語と歴史に分断されている。

see also
ひらがな改革

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