Tuesday, August 15, 2006

なぜ子どもに英語なのか

 小学校への英語教育の導入はさまざまな意見が交錯している。「国際語である英語は、これからを生きる人たちには必須のスキルで数学や歴史となんら変わらない」、「言語習得には臨界期があり、小さいうちから英語を習わなければものにできない」、「英語を理解することで国際的感覚が磨かれる」など肯定的な意見と共に、「日本語がおろそかになる」、「全ての人に英語が必要なわけではない、それより基礎をしっかりと固めるべきだ」、「偏った国際感覚が身についてしまうのではないか」といった否定的な意見も多数である。

Amazon.co.jp: なぜ子どもに英語なのか―バイリンガルのすすめ

 この「なぜ子どもに英語なのか」は、小学校英語教育を反対する大津氏の「小学校でなぜ英語?」に反旗を掲げるスタンスで書かれている。つまりは、小学校英語教育へ肯定的な意見をもった著者により書かれている。唐須氏は慶應大学の教授で、大津氏の同僚ということになるが、そのような立場の人間が真っ向勝負を挑むような形が面白いと思い、本書を手にとった。

 この本は、一貫して経験を元にして書かれている。この経験は筆者の子どもたちがほとんどなのだが、先に述べたような幼少から英語に触れることが国語力や日本語力にマイナスの影響を与えることは全くないとし、ましてや、ことばに関してより鋭敏な感覚を養うことができるとしている。2ヶ国語できることは、それ以上に相手を理解する気持ちや、コミュニケーションの場合においても開放的な気質を養うとしている。

 著者は小学校英語教育とバイリンガル教育を同列として考えている点が面白い。もちろん、小学校英語教育導入の理由としてはこれが希望であり、目標でもある。本書の内容は、以前、私も考えたことがあることが非常に多く載っていた。「英語で授業を行う」というのは、かなり、反感をかった意見だが。

 残念ながらこの本には、公立学校での事例や改善点などが書かれていない。言うは易し。具体例を挙げねば、反論の価値がない。経験は確かにどんな実験よりも確かなものだと思うが、背景が記されていなければこれもただの世間話の域をでることがない。著者の子どもたちがアメリカンスクールにいたときの感想として「たのしい」という言葉が多く見られた。なにが楽しいのだろうか?ひとえに楽しいといわれても彼らの思った楽しいが、私の思う楽しいと重なるかどうか分からない。これのオンパレードではどうにもならない。

 ただ、著者が言うように、変わらなければ「失敗」も「成功」もない。教育界では失敗できないと、改革を遅らせる要因が多々ある。これは、子どもたちを実験台にすることができないという考えからだ。しかし、それに捕らわれすぎて、何もやらないのでは話が違う。インターナショナルスクールとの交流などはすぐにでもできることではないだろうか?私もこのことはなぜやらないのではと思っているのだが、いろいろあるのだろう。

 そして、最後にこの本を読むと、日本にいてバイリンガル教育を受けるメリットというものも妥当性があるように思える。大津氏の本も読んで、相互的な感想を書きたい。

No comments: