河合隼雄 / 茂木健一郎 『こころと脳の対話』

「ネガティブ思考の人間とではなく
ポジティブ思考の人間とつながりを持とう」
ということばが頭にこびりついてる。
わが身を振り返るとゾッとする。
本書の登場人物である
河合隼雄氏と茂木健一郎氏は
ポジティブ思考の最たるロールモデル
ではなかろうか。
目次
本書は河合隼雄氏の専門分野
ユング心理学を軸にしてはなしが進む。
河合隼雄と聞いて、私が思い浮かぶキーワードは
「中空均衡構造」である。
河合 それがね、一神教的モデルでいくと、やっぱりセンターがほしいんですよ。僕はそうじゃなく、統合的ではなくて、バランスというかね、そういう考え方のほうが僕は好きなんですよ。
僕は日本の神話をモデルに考えてましてね。日本の神話の場合は、簡単にいうてしまうと、三つの神様がいる中で、ふたつの神様はものすごい葛藤とか対立があるんですよ。
で、三つ目の真ん中の神様が大事なんやけど、真ん中は何もしないんですね。たとえば天照大御神とすさのおのみことが対立する神で、つくよみの尊が真ん中の神であって、無為なんですね。
そういうのをずっと調べていって、僕は「中空均衡構造」という呼び方にしたんです。真ん中はプリンシプル(原理)もパワーももってないんですよ。だから、全体がバランスをとれるんだと。(pp.40-41)
福田さんが総理大臣に選ばれたときに
メディアがタグづけしたリーダー像。
最近ではオバマがこれではないかという
意見をちらほら聞く。
通奏低音として流れているのは
「関係性」のジレンマ。
河合 物理学の法則はどこでも適用できるわけですね。ところが、フロイトのいっていることは、フロイトとその相手の人が「自分たちをどうしようか」というなかで考えたことであって、それは誰にでも適用できるものではないと、僕は思っているわけですね。<略>
僕がいうのは、「私のやっていることは近代科学とは違います」と。「違うことをやってるんだけれど、意味があるんです」といういい方をしている。(pp.183)
とてもデリケートなはなしだと思う。
本書を読んでいると、臨床心理士として
切実な思いのようだ。
しかし、河合氏の考える世界は
とてもレベルの高い世界だと思える。
ある側面では高コストになるだろう。
このような世界を営むために
どのようなコンセンサスをとればよいのか
頭を悩めそうだ。
しかし、必要なパラダイムシフトだろう。
私は河合隼雄氏のエピソードで
好きなのがひとつある。
それはタクシーのはなしなのだが、
確か茂木氏経由で知った。
それの出所が本対談だったとは。
リラックスして読める一冊。
No comments:
Post a Comment