Thursday, March 13, 2008

ケリー伊藤 『プレイン・イングリッシュのすすめ』

 もっと評価されてもよかったのではないかと思う。

Amazon.co.jp: プレイン・イングリッシュのすすめ

 まず、「プレイン・イングリッシュってなに?」という、素朴な疑問がある。筆者であるケリー伊藤氏のホームページから引用する。

pecs-プレインイングリッシュ-Plain Englishとは

それでは、プレイン・イングリッシュは何かと聞かれると、少々困るんですが、こうですという形はないんです。よく混同されるんですが、ベーシック・イングリッシュのように、動詞は何語しか使わないとか、そういう決まりはないんです。一言で言えば、英語を母国語としている人ならだれが聞いてもわかる英語ですね。日本の英語学習者に則して言えば、中学3年までで学んだ単語で十分です。専門的なことを言うときには、テクニカルタームを使うこともありますが、構文自体は難しい構文は使わないということになります。

 ということで、プレイン・イングリッシュは英語母語話者に対するやさしい英語ということになる。評価されてよいのではと考える理由はここにある。

 極論すると、プレイン・イングリッシュは我々の中学英語になる。テクニカルタームは名詞であるから、プレイン・イングリッシュ的であるためには動詞が重要になる。中学英語の動詞が難しいのは知られている。これは、経験から述べることができる。

 中学の単語は意味が何通りも考えられる。当時の私は、そう思っていた。ちょっと難しい単語を見ると、意味が一通りしかない。これなら間違えようがない。学習者とはこういうものである。リスニングも難しい単語のほうが聞き取りやすい。一石二鳥である。

 しかし、生の英語に触れると状況は一変する。新聞や雑誌、インターネット上ではプレイン・イングリッシュを意識した文章が多い。私のように、基本単語の理解度が学校英語の範疇で止まっていると情けなくて涙が出てくる状況に追い込まれる。北米の独立系ベンダーの調査をしていたときに愕然としたことが、昨日のようである。

 それではどうすればいいか?ケリー伊藤氏は、単語の基本概念(Core Meaning)を利用しようという。今ではなじみのあることばと化した感がある。なので、説明はしない。

 私は本書を読み、ひとつ分かったことがあった。それは、学生時代の教師やえらく英語、英語に限らず外国語が達者な人たちに英英辞書を使うように勧められたことが多々ある。

 学生時代は、「何いってるんだ、この人は」といぶかしく思っていた。「なぜですか?」という問いに、納得のいく回答が得られなかったからだ。おそらく、教師も同じようなことを教師に言われたのだろう。そして、その勉強法で英語を習得してきた。教師の教え方というものは、自分の受けた教育に影響される。これは、教科教授法の授業でいやというほど聞いた。ということは、私に英英辞書を使えと言った人たちの経験知なのだろう。今ならそう考える。古い人の書いた英語学習に関する書籍を見ていると必ず書いてあることであるが、ただ、「使え」としかない。というか、基本概念なら英和辞書にも書いてあるではないか。ただ、なんとなく心許ない感は否めない。

 さて、本書を読みたければ、ケリー伊藤氏のホームページを見るとよい。「すすめ」の心は、本書と同程度に読みとることができる。

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