岡本浩一 『最強の英語上達法』
心理学と学習というと、市川伸一氏を思い出す。認知心理学の研究成果を適用した良書がある。それの英語版であってほしいという思いで手にした。各種レビューでも悪い評価はない。
020号 「最強の英語上達法」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 - 語学の虎
書評は上のリンクサイトが詳しい。私も同じような箇所に付箋やラインを引いている。重なるところもあるかもしれないが、興味深い箇所を書く。
記憶に関することは、勉強本に書かれてることが多い。なので、よく知っていると思う。ここでは、外国語の記憶体系が興味深かった。
英語の場合、語彙についての知識は宣言型知識である。文法についての知識も宣言型知識である。(pp.76)
英語学習ということで考えると、母音や子音の正しい(英語らしい)発音の仕方を口唇や舌の動きとして理解し、スムーズにできるようになるプロセスは、手続き型知識の習得である。(pp.78)
なにが興味深いのかというと、訳という視点がまったくないということである。宣言型知識とはそういう概念である。
多くの人は、読んでいる英文すべてを和訳しているわけではないのだが、少し難しいところにくると、日本語に訳してみないと気が済まない習慣がついている。そこからいったん脱却することが大切である。
そうして、どうしてもわかりにくいところは、構文を考えながらゆっくり何度も音読してみる。必要なら身振り手振りをいれて何度も音読してみる。(pp.97)
外国語をマスターしようという場合、もっとも大きな障害のひとつは、母国語である。このことをよく念頭においていただきたい。(pp.99)
次に興味深いのは単語の覚え方だ。ここは丸々引用したいが要約する。筆者は、
英単語は、まず、丸暗記するのが正しいと考えている。(pp.104)
というスタンスだ。これは、文脈とともに単語の学習もしましょうというものに対するアンチテーゼである。わたしも、全面的にこれを指示する立場である。しかし、このことに触れている書籍が、私が読んだなかではなかった。筆者の理由は、
文の中で見て、用法やニュアンスを理解するという活動は、覚えるという活動とはまったく別の頭の使い方を必要とする。そのふたつを同時にすることは、心理学的には競合反応となり、どちらも中途半端になる。(pp.104)
このことをはっきりと同じ文脈で言及している文章は少ない。
発音に関することもガツンときた。
発音の習得には年月がかかる。いまのあなたの発音は決して完全ではない。けれどもそれを気にしないで、そのときどきの自分のベストの発音で声を出すことである。(pp.114)
この理由も本書に書かれている。なかなかハードルが高い。
本書は英語学習法に対する不安を軽減してくれる。必然的にモチベーションがあがる。今すぐにでもやらなければという気にさせてくれる。とりあえず、文法書と単語集、発音教本を揃え Let's go! という気持ちになる。
本書は、新書としては分量が多く、250ページくらいある。しかし、読む側を考えて体裁されている。コラム集といった感じでとても読みやすいし、部分読みもしやすくなっている。今思うと、本書は新年度にふさわしい。
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