Friday, March 21, 2008

佐伯智義 『英語の科学的学習法―文法的分析でマスターする』

Amazon.co.jp: 英語の科学的学習法―文法的分析でマスターする: 佐伯 智義: 本 文法的分析で英語をマスターするとサブタイトルにある。本書タイトルの英語表記は "A Guide to Grammatical Analysis" である。

 文法的解析とはなにか?

文法的分析は、品詞と単語の性質(数、性、人称など)、それに機能(文を構成する要素;主語、直接目的語、間接目的語、状況補語など)をチェックすることです。(pp.31)

 この説明を読むと、学校教育でも十分に、というかこれしかやってないではないかという気がしないでもない。しかし、筆者の見解は以下である。

文法は“文法の授業”のためだけのもので「テキストを読む時や英語を話す時に、文法を考慮する必要がない」という考えが一般的です。(pp.24)

 このように言われれば、「うん、そうかも」とも思える。しかし、私の知る限り、このことで学校教育を憂うことは無駄である。むしろ、生徒個人、親に向けたメッセージであるというならば納得である。学校教育で考えなければならないことは、評価方法であろう。

 さて、本書の英語学習における目標・到達点は文法の自動化である。

●英語マスターへの本書の提案
1.英語は品詞や語順が大事な言語であることを理解しよう
2.学校英語で作られた、英訳・和訳の神経回路を断ち切ろう
3.「文法的分析」で、頭の中に英語だけの神経回路を育てよう
4.ネイティブにように、無意識下での分析を体得して、英語の読み書きと会話をマスターしよう

 ネイティブは文法を知らないのではなく、意識せずとも文法規範に則った発話やらなんやらの言語活動を行う(4)。中学生が「なぜ国語を勉強するの?」と考えるのと同じであろう。同程度に英語の文法事項を脳に刷り込ませ、自動化することを目標としている。その訓練法として、文法的分析を推している(3)。まずは英語のグローバル・ルールを無から作り出さねばならない。そのためには、とにかく、ルールを意識しつづけることが第1のハードルになる(1)。教師としては生徒に意識させつづけることが課題となる。上の引用でもっとも神経を尖らせなければならないのは「2.学校英語で作られた、英訳・和訳の神経回路を断ち切ろう」ではないだろうか?

 英文を読んだとき、内容は頭に残るが、英文そのものが残らない。英語で会話しているときも、内容は頭に残るが、英文とその音声が残らない。これに悩んでいる人は多いと思う。これは和訳の弊害のひとつだと思う。なぜか?和訳をしないと理解したと思えないからである。そうなると、母語を介入しないダイレクト・メソッド系の教授法がよいのかという話になるが、ご存知のように DM は効率・能率がわるい。学校のような大人数へのレクチャーで短い時間に要点を伝える術としては敬遠されている。教わる側としても不安だし、母語を介入せず外国語を理解するという状態がいかなる状態か理解できないだろう。これをどうにか解消しようとがんばっているのが「多読」による教授だと、私は理解している。

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