Sunday, August 26, 2007

英語学習7つの誤解

 英語科教育法の授業でとりあげられた議題が散見する。そこでも意見が分かれることが多かったが、英語教育に携わる者としては常識的なことばかりである。

Amazon.co.jp: 英語学習7つの誤解 (生活人新書 229)

 まず、本書に示されている英語学習の誤解は以下
  1. 英語学習に英文法は不要である
  2. 英語学習は早く始めるほどよい
  3. 留学すれば英語は確実に身につく
  4. 英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である
  5. 英語はネイティブから習うのが効果的である
  6. 英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である
  7. 英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある
 「7つで足りるのかなぁ?」と思っていたが、外国語教育に携わるものと学習者の間の壁としては十分だろう。それは、上記の7つに付け加えて、母語・外国語・第二言語、臨界期、英語で考える、などなど、分かるようで分からないことばについて解説してくれているからである。

 大津氏も平たく言ってしまえば脳科学者である。なので、脳科学についても言及がある。この部分を読むと残念な気持ちなる読者もあろうが、現状をきちんと説明しなくては脳科学の発達も停滞してしまうだろう。8月19日にフジテレビの「ボクらの時代」で川島隆太氏以下、脳科学者3人が出演していた。そこでも、脳科学をとりまく物事に憤りがあるような発言があった。一語一句覚えているわけではないので、脳内ソースから咀嚼。
「右脳幼児教育を全否定しない。そこには、経験的な何かに基づいて、ある程度の効果があるのかもしれない。しかし、その効果が脳科学や右脳により説明できているとは思えない。」

 こうなってくると、科学というものをどのようにとらえるかという問題になってしまう。科学的に証明されたなどと言われると、飛びつきたくなる気持ちは理解できる。しかし、「科学的とはどういうことなのか?」と考えると語学に関することほとんどは根拠が薄い。だから「リテラシーなのだ」となる。

 最近は「右脳」という冠のついた書籍はめっきり見なくなった。右脳と英語。これもよくよく考えると矛盾する。英語は論理的な言語といわれている。日本語は論理的でない。ならば、日本語こそ右脳の特徴をもった言語ではないだろうか?どちらが正しいか、間違っているのか、それは分からないが、これだけでも矛盾している。だから「英語脳」なのだろう。隙がない。流行廃りがあるもんだというのがよくわかる。

 さて、英語学習とは関係のないことを書いてきたが、本書の核はこれだと私は感じた。科学的という表現はいただけないが、効果のある人には効果のある学習法は存在するということだ。これは、現状の英語学習をとりまく環境には希望的な考え方ができると思う。

 なぜ希望的な考え方ができるのか。それは、とにかく色々な学習法が作り出されているということに尽きる。参考書にしても、一体、何種類あるのか分からないくらい世には存在する。その中にはひとつくらい、自分に合ったモノがあるのではないだろうか、そういう希望である。それゆえに、本書での最終章「あとは動機づけと目標設定」に続く。

 本書は、英語教員が怠っていたことを穴埋めするモノだと、私は思う。

 英語教員にしてみれば、「こんな本が、なぜ必要なの?」と思うのかもしれない。当たり前すぎるからだ。保護者や生徒から「あのね……」と問われて、はじめて、はっとするのかもしれない。教師側としては「言ったじゃない…、もう…」とも思うかもしれない。信用されてないのか、説明を怠ってきたのか、それは分からない。しかし、「じゃぁ、先生、どうすればいいの?」と問われたら、それはまた別の問題である。

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