Wednesday, July 23, 2008

森達也 『世界を信じるためのメソッド―ぼくらの時代のメディア・リテラシー』

Amazon.co.jp: 世界を信じるためのメソッド―ぼくらの時代のメディア・リテラシー (よりみちパン!セ): 森 達也: 本 理論社の「よりみちパン!セ」シリーズ、森達也の第2弾である。前著がよかったので読んでみた。前回同様、「考えること」を考えらさせられる1冊だ。

 本書のテーマはメディアリテラシー、ちょっと前に盛んに連呼されていたことばである。最近、トンと聞かなくなった。流行り廃りは怖いと思う。

 忘れないこと。知ること。見ること。聴くこと。

 そのためには何が必要か?もうわかるよね。メディアが必要だ。だからメディアを正しく使おう。あなたたちは大人の予備軍だ。あっというまだよ。すぐに大人になる。誰かが答えを教えてくれる時間は終わる。自分で考えて、自分で決めて、自分で動かなくてはならなくなる。そのときにまた、同じ過ちをくりかえすかどうかは、メディアの使いかたにかかっている。(pp. 153)


 本書を「メディアを斬る」的なものに矮小化しないでもらいたい。

 前回は知ることを丹念に述べていた。私はそれをヨーロッパの国語教育のようだと述べた。本書はそれを発展させた形である、複眼的なものの見方を問う。

 アメリカの大学に留学した体験エッセイなどを読むと、「とにかく本を読まされる」、「レポートを大量に書かされる」などという苦労話が多い。それは本書のような複眼的なものの見方の訓練である。

 複眼的なものの見方はクリティカルシンキングだとか、批判的思考法だとかいろいろな呼び名がある。ざっくりまとめると、疑え、つっこめということだ。そこら辺の書籍は腐るほどある。探せばいくらでも見つかる。しかし、そのベースとなる文章を文章のまま読む、理解するという作業が軽視されている、と私は感じている。なので『いのちの食べかた』はすばらしいと感じた。そして、これがヨーロッパの国語教育だと述べた。欧米では小学校の国語授業は文章を文章のまま読む、理解することに時間を費やす。これは退屈でつまらない作業である。これが大切であることは、批判的に読めなどと言われてはじめて気がつくことかもしれない。私はそうであった。

 テレビや雑誌、新聞なのどのメディアを相手に論を進める。私も知らない裏側があり、大変勉強になる。

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