Thursday, April 03, 2008

齋藤孝 『齋藤孝の相手を伸ばす!教え力』

Amazon.co.jp: 「齋藤孝の相手を伸ばす!教え力」: 斎藤 孝: 本 先日、塾講師の教え方の本について書いた。確かに見習わなければならないところが多い。しかし、学問として教師教育に携わっている人たちはダメなのか?というわけで、読んでみた。

 著者は齋藤孝氏、メジャーどころである。国語の先生というイメージが強いが、「はじめに」でもふれているように、氏の専門は「教育者教育」である。安河内哲也氏とは対極である。教師の力量低下に関して、コアな部分を担ってきた先生はどう思っているのか?

 まず、本書がどのような位置づけなのか、「はじめに」に以下の記述がある。

以前、『教師=身体という技術』(世織書房)という本を書きましたが、これは専門書であり、教職以外の方にとっては距離が遠く、説明しきれない部分がありました。そこで、一般の方向けに、「教える」という行為を解説してみたいと考え、この本を執筆することにしたのです。(pp.5)

 専門書ではないが、内容は同レベルであると考えよさそうである。このようなことを書くからには、以前書いた書籍の内容を、一般の人に近い形にしたと考えるのが素直だと思ったからである。

 学問として「教育者教育」を研究している大学教授と塾講師で地道に培ってきた教え方は、どのように違うのか?当然であるが、同じである。違うところを探すほうがむずかしい。強いてあげるならば、学習環境に生徒の身体を考慮しているかどうかがあげられる。

 安河内氏は、自分の努力によるんだという、徹底した自己批判を貫いているように思える。場の雰囲気を和ませるのは、己の話術、雰囲気、所作などなど、自分が変わることで相手の過度な緊張を解くと読める。

 齋藤氏は、それプラス、生徒の身体を考慮している。これも氏の専門のひとつである。呼吸法や四股は有名かもしれない。このような記述がある。

学ぶ側の構えというのは、空間的、時間的にかなり制約されるものです。(pp.170)

同じように、教室内が寒すぎたら暖める、熱ければ窓を開けて冷やす。基本は、酸素量に気をつけるということです。(pp.170)

 安河内氏にとっては、あまりにも当たり前すぎて書かなかったのかもしれない。予備校の設備がどのようなものか、私は知らない。公立の小中よりはマシだとは思うが。安河内氏は、メンタル部分についてよく書かれており、齋藤氏はフィジカル部分についてもよく書かれている。私が、見つけた違いはこの部分である。

 3色ボールペン風にいうなれば、本書は緑が多かった。そういえば、本書には3色ボールペンが一言も出ていない。

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