Thursday, July 19, 2007

知に働けば蔵が建つ

 「リベンジ、内田樹」という意気込みで手に取りました。

Amazon.co.jp: 知に働けば蔵が建つ

 内田樹氏のブログは今年に入ってから購読をはじめた。もっとはやく購読していればよかったと後悔した。しかし、いい時代になった。クオリティの高い文章を氏の体調がよければ毎日読むことができるし、なにか大きな問題があると有識者のリアクションをすぐ見れる。

 氏の著書は2冊目であるが、1冊目は途中棄権。「むむ、危険だ」という類のモノではなく、1ページ、1ページが重い鉛のようページをめくるのが困難だったためだ。ある程度のバックグラウンドがないとまったく面白くない。何を言っているのかさっぱりだった。

 本書はブログが基になっているだけに、エッセイやコラムのようで非常に読み易い。が、そんな中でも「あとで読む」というのが1つや2つある。「おわりに」で氏はこう言っている。

例えば、本書収録のテクストの中では、ニーチェとオルテガの大衆 = 貴族論を祖述した「貴族と大衆」という長文がたいへんわかりにくい内容のことを扱っている。読み返してみて、書いた本人が「え? 何が言いたいわけ? どうつながるの?」と同じ段落を二度三度読み直さないと意味がわからないというところさえあった。(pp.299)


 よく分かってらっしゃる。しかし、「あとで読む」とラベル付けしたところは面白い箇所でもあると、私は思っている。すんなり私の中に入ってこないということは新しいことか、相反する考えということ。そういうのが面白い。特に政治に関するところは、半分以上が新しいことだったのだが、「あとで読む」とラベル付けするのではなく、リアルタイムでガンガン指が進む。

 とりわけ印象に残っているのは教育に関する部分なのだが、「危機管理の陥穽」のまとめの部分が同じ思いだった。

すべてのリスクを教師はマネージすべきだというなら、「授業以外には何もやらない」というのが教師たちが取りうるいちばん確実で誠実な対応であろう。(pp.262)


 私が思っていたのは危機管理に関することではないが、学校の守備範囲を狭めるというのは通じるものがある。

 本書にはいくつかの書評がある。『希望格差社会』は読もうと思っていて、読めていないのだが、苅谷剛彦氏の『階層化日本と教育危機』というのは知らなかったので読んでみたい。

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