Tuesday, July 31, 2007

格差時代を生きぬく教育

 タイトルに偽りあり。本書は寺脇研氏の思いをはいた本である。私がタイトルをつけるならば、「寺脇研 教育を語る」程度のものだ。

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 「寺脇研って、誰?」というところから考えなければならない。寺脇研は元文科省の役人である。文科省のスポークスマン的存在としてメディアに露出していたので、知っている人は多いようだ。私が氏のことを知ったのは、「朝まで生テレビ」であった。テーマが何だったかは忘れてしまったが、「言うことはトンデモではない」という記憶だけがある。

 本書の内容もそれほど突拍子もないことを語っているようには受取れぬ。まっとうなことを述べている。

 第1章でゆとり教育について述べられているのだが、主要教科だけでは一生をまっとうできない、生涯学習の時代に入ったという認識から、生涯学習に必要な資質として「大人との交わり」や「美的感覚」が重要になると導いた。それが基本スタンスだと述べられている。

 「美的感覚」とは、私が本書から受取った感覚語なので、本書にはない言葉だ。本書では「マインド」という言葉がこれにあたる。これは問題設定能力と、本書からは解釈できるが、今で言う「生きる力」と同義語だ。これを育成するのに格差があってはならんというのが、ゆとり教育のコア。なぜ大反対されたのか、よく分からん。なぜ現場にうまく伝わらなかったのか、文科省の責任は思いと感じる。

 本書では寺脇氏個人の思いとは別に、役人として、公務員としてどうあるべきかという話しが、第2章にある。これが非常にむずかしいと感じる。役人としては全体を俯瞰の目で見なければいけない。しかし、本書では、「森を構成する木にも注意していますよ」というようなアピールがあるが、その範囲がえらい狭く感じた。が、これは他に書くことがないための揚げ足取りレベルだ。

 結局、この本は何が言いたいのか、私にはよく分からない。収穫があったのは「官僚的思考」の一端が見えたことか。寺脇研氏を知っており、ある種のラベル付けをしている人が本書を読むと、反対のベクトルに振り子が振られ、私のように混沌とするかもしれない。「まったくすっきりしない『踊る大走査線』の教育版」というのが、私の感想。

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